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人魚の森 

食われながらも絡みあい、
交合を重ねあう哀しいエロティシズム。


人魚の森 (るーみっくわーるどスペシャル)


ハンス・クリスチャン・アンデルセンの「人魚姫」は、恋する薄幸の美女といった印象だが、ヨーロッパの人魚伝説は日本にもたらされたのち、そこに和の伝説や風味が付加され、イメージがほどよく醸成されて全くのべつものに生まれ変わったり、あるいは作家個々の解釈や、ある種のひねりが加わって奇妙な物語となったりしている。

たとえば阿部公房の「人魚伝」。
それは緑色の美形の生き物だが、難破船のなかで人を食っていたというのである。しかも人魚を連れ帰った主人公は、おのれの肉を食われながら再生を繰り返すという奇想の話である。
人肉を食う人魚の口臭まで伝わってきそうな生々しさがある。

高橋留美子の「人魚の森」も不気味であり、また哀しい物語となっている。
第一話が「人魚は笑わない」であるが、人魚の境涯はとても笑えるようなものではない。

人魚の肉を食った人間は、うまく行けば不老不死となるらしい。
だが、多くは死ぬか「なりそこない」といわれる哀れな生き物になるという。
そして人魚はさらに、人魚の肉を食って不老不死となった人間を食うらしい。
人魚はそうして若返るという。

人間と人間が、あるいは人間と人魚が。
時に食い、時に食われ、屠りあいつつ絡みあい、怪しい交合を重ねあうかのような奇妙なエロティシズムが漂っているのである。



「人魚の森」 高橋留美子
1984年- 小学館「増刊少年サンデー」連載
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