スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

魔太郎がくる!! 

嗜虐的行為に対する破壊的報復。
呪いの言葉は「ウラミハラサデオクベキカ」。


魔太郎がくる!! (1)

僕が少年の頃は、「首吊りごっこ」なるものがあった。
幸い僕の近辺では事故になることはなかったが、ある地方では死人が出たように記憶している。
ルパード・シェルドレイクの仮説「形態形成場の理論」ではないが、いじめの新しい形態がどこかで生まれると、別の場所でも同じパターンが次々に発生するのかもしれない。
いじめは嗜虐的行為であるという。
真に嗜虐的なものとするためには、相手にとって何が苦痛であるかを考える悪魔的な想像力が必要となるのかもしれない。

「誰がおめえみたいなウラナリのチビと友だちになるもんか」

「魔太郎がくる!!」の浦見魔太郎は中学生だが、メガネを掛けたウラナリ風である。
ウラナリとは、青白く弱々しい人のことで、夏目漱石の「坊ちゃん」に登場する。主人公が赴任先の学校の英語教師に皮肉を込めてつけた渾名である。

魔太郎は、いつも学校で嗜虐的行為、すなわち、いじめの標的にされていた。
顔をボコボコにされたりする肉体的苦痛だけではなく、精神の苦痛も与えられていた。
たとえば好きな女の子の前で、ズボンとパンツを脱がされるという屈辱を受けたりする。
魔太郎は黒い手帳に恨みの言葉を書き付ける。そして黒魔術をもちいて破壊的報復を行う。
「ウラミハラサデオクベキカ」
魔太郎をいじめた生徒は、深夜のビル建築現場に誘われ、パワーショベルで圧死させられた後、穴に埋められ、コンクリートを流し込まれる。

溺死、轢死、墜落死など、いじめに対する報復は派手な力技が多い。
魔太郎の魔術は、次第に嗜虐的になってくる。嗜好性、趣味性が色濃く反映されてくる。
魔太郎は、シュルレアリスムの画家であるルネ・マグリット作「ピレネーの城」を好んだ。この不思議な絵の世界さながらに、巨岩をいじめっ子の頭上に落としたりもする。

魔太郎の家の向かいに、不気味な阿部一家が引っ越してきてから物語の様相は一変する。
一家の中の目つきの悪い赤ん坊である阿部切人(あべきりひと)は、本能的ないじめっ子の性質と邪悪なパワーの持ち主だった。悪魔的な知恵をもちいて魔太郎を陥れる。
さらに満月万太郎という謎の男がやってきて、東京を悪のはびこる暗黒都市にしようと、阿部一家と魔太郎をけしかける。魔太郎の中で、善と悪の心の闘争が始まり、物語はいじめとその報復という枠組みを超えて、スケールの大きなダークファンタジーの世界へと向かう。

人間の中には善と悪が共存している。
善の部分を引き出すためには、究極の悪を見せるのもひとつの方法なのかもしれない。

「魔太郎がくる!!」藤子不二雄
1972-1975年「週刊少年チャンピオン」連載
スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。