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「迷走王ボーダー」 

クソッたれたイメージ社会に適応した人間たちを
「あちら側」と呼ぶ、
無為で過激なボーダー(境界線上)の生き方。


ボーダー 全14巻 狩撫麻礼&たなか亜希夫/作

この漫画は僕のバイブルのようなものだった。
こんなものをバイブルにした人間の人生は、ろくなものではない(憫笑)。
ボーダーな生き方は、漫画の世界でのみ愉しむのがいいのかもしれない。

蜂須賀と久保田は、旅の途中、中近東あたりで出会った。
蜂須賀は東京に帰ると久保田の住む「月光荘」を訪ねた。
しばらくして居候は申し訳ないと、「月光荘」の元共同便所だった便器のある部屋に棲むようになる。家賃は月3千円。

蜂須賀と久保田、東大志望の浪人生木村(のちに東大農学部)の三人は、ともに「月光荘」で飯を炊き、味噌汁をすする生活者となる。

「無為こそが過激。なにもしないでブラブラしているのがホントは一番チカラ技なのさ」

蜂須賀がクソッたれたイメージ社会と呼ぶ、「あちら側」への一方的な敵意が軋轢を生み、大騒動を起こす。
泉鏡花の「高野聖」を想わせる山中の彷徨をしたかと思えば、地下のセメントプロレスでおのれの修羅を賭ける蜂須賀。
下町の銭湯、赤ちょうちん、無頼派文学、ボブ・マーレイ、ブルーハーツへの賛歌。
「ボーダー」の世界は、過激さ、妖しさ、温かさ、懐かしさに満ちている。

「木村、金貸せ。久保田、靴貸せ」
「おまえは評論家か?評論家は男のオバサンだぞ」
「この悲しみが狂気に変わらないうちに俺は旅に出る」
「魂は伝達可能だ、それだけは信じている」
「極貧と無限大は等しいってことさ、どちらも消費からスポイルされる」
「この人間交差点野郎が!」
「コンビニの余りモノだ、涙ぐむほどのもんかよ」
「俺は二人同時に求愛したんだ。そして俺は世間から気違い扱いされた」
「夢とロマンを探す思いに駆られて、男は一生フラフラ迷走しなきゃならねえんだ」

蜂須賀による、過激な居直りのような言葉が響く。

「迷走王 ボーダー」狩撫麻礼/たなか亜希夫作 双葉社 全14巻
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「妖怪ハンター」諸星大二郎 

存在に関する不安、あるいは何者かへの畏れ。
人間の底に眠っている恐怖の根源を探る漫画。


妖怪ハンター(地の巻)

人間の意識の底には、何者かに対する畏怖の記憶が眠っているのかもしれない。
作家ラヴクラフトの創造したクトゥルー神話は、人類が誕生する以前から地球に存在していた旧支配者への信仰が基本となっている。
旧支配者である暗黒の神々はヨグ=ソトホートとかニャルラトホテプとか、呪文のようなわけのわからない名で呼ばれる。
その不気味な力は、いまも魔道書の中に伝わっていたり、あるいは古代文明にまつわる伝説として残っているのかもしれない。そして、時に悪夢や狂気として人間に働きかけたりするのかもしれない。

諸星大二郎「妖怪ハンター」には稗田礼二郎という伝奇の語り部が登場する。この名は「古事記」の編纂者とされる稗田阿礼のもじりだろうと思う。
稗田礼二郎は妖怪の実在を説いたために学会を追われた民俗学者で、各地で起こる得体の知れない事件に介入する。

殺人事件を契機に、比留子古墳に隠された謎を追う「黒い探究者」。
突如として唇が真っ赤に染まり、学校を死の恐怖に陥れた女子生徒に宿る魔力を題材とした「赤い唇」。
隠れキリシタンの里に秘められた世界創世の物語を探求する「生命の木」。
死者を甦らせる反魂の法で町に混乱を招く、異形の侵略者による干渉を描いた「死人帰り」など、不気味きわまりない話が綴られた短篇集。

稗田礼二郎は、この世に眠っている得体の知れない恐怖の根を探ろうとするが、その淵源は底なし沼のように深い。それぞれの物語が終わりを迎えることで、謎がさらに深まるのである。

「深淵を覗くとき、深淵もまたあなたを覗いているのだ」
ニーチェの言葉を思い出す。

「妖怪ハンター・地の巻」諸星大二郎 集英社文庫

「犬神」外薗昌也 

わたくしといふ現象は
假定された有機交流電燈の青い照明です。


犬神 (4)

高校生の史樹は奇妙な犬と出会う。
犬は史樹に、宮沢賢治の詩を声を出して読めと強要した。

わたくしといふ現象は假定された有機交流電燈の青い照明です。
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景やみんなといっしょにせわしく明減しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈のひとつの青い照明です……
-宮沢賢治「春と修羅」より

犬は瞑目して聞いていた。
自分が何者であるのかを知りたかったのかもしれない。
犬の耳には23という数字のかたちをした痣があった。
史樹は、この犬を23と呼んだ。

23エニグマという神秘思想がある。
23という数字には特別な意味があり、何やら不思議な力が宿っているとする考え方。
人間の染色体は23対であり、黙示録とされるマヤの暦は2012年の12月23日に終わっている。
カエサルは23回突き刺されて殺された。テンプル騎士団には23人の総長が存在した。
などなど、こじつけではないかと思われるものもあるが、とにかく意味があるらしい。

外薗昌也「犬神」では、アレイスター・クロウリーが唱えた23個の元素による生命の樹の在処をめぐって人間の欲望が交差する。アレイスター・クロウリーは20世紀最大の魔術師といわれる実在した人物である。生命の樹には永遠の生命、人間の次なる進化の鍵があるのかもしれない。

23、そしてゼロと呼ばれる犬は、人間の様子を観察する。あるいは積極的に干渉してくる。
犬たちは、何者かに「人間を見よ」と命令されていた。
23とゼロは、謎の23細胞の宿主で、驚異的な生命力と、体を武器化する能力を持っていた。
23は全身から剣のような突起物を出し、ゼロは鞭のような触手を伸ばして闘う。

人間は不完全な弱い生き物であることがこの漫画から伝わってくる。
精神が弱いし、知性が足りないから争いや不幸を呼び込む。
犬神、あるいはそれを超えた存在との深いレベルの交感が必要なのかもしれない。

「犬神」外薗昌也
アフタヌーンKC(講談社)全14巻
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