「哭きの竜」能條純一
「あんた背中が煤けてるぜ」
背中がすすけているとは、運のない寒い男のことか。

麻雀で、やたらに哭(な)く奴は嫌われる。
こらえ性のない男と馬鹿にされる場合もある。
哭くことで、門前(めんぜん)より役が下がることが多いし、他人の自摸(つも)の流れも変えてしまうから、うるさい野郎と思われるのである。
哭くことは、手の内を晒すことでもある。
能條純一の「哭きの竜」は、静かに哭きまくりながら、異常な強運で勝ち続ける竜という男の話。
竜は、たとえば裸単騎(牌が一枚)になるまで哭く。
裸を晒した地獄待ちでも、哭くことで運を呼び込み、役満を自摸ったり当てたり(出和了)する。
そして、「あんた背中が煤けてるぜ」と、つぶやく。
竜の異常な強運は極道たちの精神を引きつけた。
博徒は、博打に限らず、すべてにおいて運まかせの人生を生きる。
極道の甲斐正三は竜の運を欲しがり、竜をつけ回す。
極道たちが最後に賭けるのは自分の命である。
竜は麻雀の場において、哭いて待つ。
そして竜の女は、たとえば雨の中、ひたすら竜を待つ。
哭くこと、すなわち自分の手の内を晒すことは、運との深い関わりがある。
どんなに哭きまくっても、ルール違反ではない。
「哭きの竜」能條純一
1985年- 竹書房「近代麻雀」に連載
背中がすすけているとは、運のない寒い男のことか。

麻雀で、やたらに哭(な)く奴は嫌われる。
こらえ性のない男と馬鹿にされる場合もある。
哭くことで、門前(めんぜん)より役が下がることが多いし、他人の自摸(つも)の流れも変えてしまうから、うるさい野郎と思われるのである。
哭くことは、手の内を晒すことでもある。
能條純一の「哭きの竜」は、静かに哭きまくりながら、異常な強運で勝ち続ける竜という男の話。
竜は、たとえば裸単騎(牌が一枚)になるまで哭く。
裸を晒した地獄待ちでも、哭くことで運を呼び込み、役満を自摸ったり当てたり(出和了)する。
そして、「あんた背中が煤けてるぜ」と、つぶやく。
竜の異常な強運は極道たちの精神を引きつけた。
博徒は、博打に限らず、すべてにおいて運まかせの人生を生きる。
極道の甲斐正三は竜の運を欲しがり、竜をつけ回す。
極道たちが最後に賭けるのは自分の命である。
竜は麻雀の場において、哭いて待つ。
そして竜の女は、たとえば雨の中、ひたすら竜を待つ。
哭くこと、すなわち自分の手の内を晒すことは、運との深い関わりがある。
どんなに哭きまくっても、ルール違反ではない。
「哭きの竜」能條純一
1985年- 竹書房「近代麻雀」に連載
代打屋トーゴー
あんたは道具に頼りすぎだよ。
人間汗出して走らにゃ。

第28話「ゴールド・バスター」で、攻撃ヘリまで持ち出してきた敵を倒したときに、トーゴーがはいたセリフ。
吉本大介はふたつの顔を持つ。
表の顔は東京の某区役所土木課に勤務する無能職員。
裏の顔は代打屋で、殺人と営利誘拐以外ならどんなことでも引き受けるパーフェクト・フォロー・ピンチ・オフィスの所長。
持ち込まれる依頼は、逃げたアナコンダや猫の捜索からボディガード、サルベージ、救出などさまざまだが、基本的には奇妙奇天烈な怪事件、あるいは馬鹿げたもの。
トーゴーは科学知識もあり、人間の心の機微にも通じているようだが、スキも多く、仕事の過程で頻繁にダメージを負う。
ただし、引き受けた仕事に対する粘着力、醜いまでのしぶとさ、突拍子もないアイディア、嘘のような運の強さで、最後は仕事を完遂する。
そして依頼人や敵に向かって格好をつけたセリフをはく。
第32話の「ハリマオ」が印象に残っている。
ハリマオは異国から来たメスの虎のような気を発散する美女で、男たちは彼女に近づくだけで性の放出が止まらなくなり自滅する。トーゴーはハリマオの体の謎を解明し、最後は彼女を導く。
裏の顔を持つ男の話は、大藪春彦の「蘇る金狼」など昔から結構ある。
男にとって憧れの生き方のひとつなのかもしれない。
これからの時代、サラリーマンも副業、いや本当の自分を出せる「精神の正業」とでもいうものを持っていたい。
「代打屋トーゴー」 たかもちげん
1983-1990年「コミックモーニング」連載
人間汗出して走らにゃ。
第28話「ゴールド・バスター」で、攻撃ヘリまで持ち出してきた敵を倒したときに、トーゴーがはいたセリフ。
吉本大介はふたつの顔を持つ。
表の顔は東京の某区役所土木課に勤務する無能職員。
裏の顔は代打屋で、殺人と営利誘拐以外ならどんなことでも引き受けるパーフェクト・フォロー・ピンチ・オフィスの所長。
持ち込まれる依頼は、逃げたアナコンダや猫の捜索からボディガード、サルベージ、救出などさまざまだが、基本的には奇妙奇天烈な怪事件、あるいは馬鹿げたもの。
トーゴーは科学知識もあり、人間の心の機微にも通じているようだが、スキも多く、仕事の過程で頻繁にダメージを負う。
ただし、引き受けた仕事に対する粘着力、醜いまでのしぶとさ、突拍子もないアイディア、嘘のような運の強さで、最後は仕事を完遂する。
そして依頼人や敵に向かって格好をつけたセリフをはく。
第32話の「ハリマオ」が印象に残っている。
ハリマオは異国から来たメスの虎のような気を発散する美女で、男たちは彼女に近づくだけで性の放出が止まらなくなり自滅する。トーゴーはハリマオの体の謎を解明し、最後は彼女を導く。
裏の顔を持つ男の話は、大藪春彦の「蘇る金狼」など昔から結構ある。
男にとって憧れの生き方のひとつなのかもしれない。
これからの時代、サラリーマンも副業、いや本当の自分を出せる「精神の正業」とでもいうものを持っていたい。
「代打屋トーゴー」 たかもちげん
1983-1990年「コミックモーニング」連載
家裁の人
裁判官は何を考え、
どんな生活をしているのか?
![家裁の人 4巻 セル版 (4)[ビデオ]](http://images-jp.amazon.com/images/P/409903044X.09.TZZZZZZZ.jpg)
少年犯罪がずいぶん前から社会問題となっている。
ニュースを見ると、少年たちへの怒りがこみ上げてくる。
家裁の現場で、どんなふうに少年が裁かれているのかを知っておくのも悪くはない。
主人公の桑田判事は、最高裁判事を父に持つ毛並みのいい裁判官。
司法試験の上位合格組で、判事としての実務能力も高く評価され、最高裁調査官転任への打診もあったが、これを拒否、家裁での仕事にこだわる。
判事とは独立した存在で、転任を拒否することもできるらしい。上層部といえども、判決に圧力を加えることができないようにするためである。
ただ、同じ場所に長くはいられない。
数年でどこかに異動するため、全国には官舎が用意されている。
桑田は他の家裁への転任は受ける。
「育ててみませんか?」
というのが桑田判事の口癖で、家裁の庭、官舎の庭でいろんな植物を育てている。そして他人にも、育てることをしきりに勧める。散歩も好きで、道を歩きながら季節の移ろいの中、木々や草花の変化を楽しむ。
各話のタイトルにも「ユリ」とか「オランダナデシコ」とか、花の名前がつけられている。
桑田判事は昼行灯のように、ぼーっと花を見つめながら、送致されてきた少年のことを考え続ける。
どういう判決を下すことが少年を育てることになるのかを。
少年を育てることは、もしかすると違憲合憲の審理よりも、国にとって大切なことかもしれない。
「家裁の人」作・毛利甚八 画・魚戸おさむ
1989年〜 小学館ビックコミックオリジナルに連載
どんな生活をしているのか?
![家裁の人 4巻 セル版 (4)[ビデオ]](http://images-jp.amazon.com/images/P/409903044X.09.TZZZZZZZ.jpg)
少年犯罪がずいぶん前から社会問題となっている。
ニュースを見ると、少年たちへの怒りがこみ上げてくる。
家裁の現場で、どんなふうに少年が裁かれているのかを知っておくのも悪くはない。
主人公の桑田判事は、最高裁判事を父に持つ毛並みのいい裁判官。
司法試験の上位合格組で、判事としての実務能力も高く評価され、最高裁調査官転任への打診もあったが、これを拒否、家裁での仕事にこだわる。
判事とは独立した存在で、転任を拒否することもできるらしい。上層部といえども、判決に圧力を加えることができないようにするためである。
ただ、同じ場所に長くはいられない。
数年でどこかに異動するため、全国には官舎が用意されている。
桑田は他の家裁への転任は受ける。
「育ててみませんか?」
というのが桑田判事の口癖で、家裁の庭、官舎の庭でいろんな植物を育てている。そして他人にも、育てることをしきりに勧める。散歩も好きで、道を歩きながら季節の移ろいの中、木々や草花の変化を楽しむ。
各話のタイトルにも「ユリ」とか「オランダナデシコ」とか、花の名前がつけられている。
桑田判事は昼行灯のように、ぼーっと花を見つめながら、送致されてきた少年のことを考え続ける。
どういう判決を下すことが少年を育てることになるのかを。
少年を育てることは、もしかすると違憲合憲の審理よりも、国にとって大切なことかもしれない。
「家裁の人」作・毛利甚八 画・魚戸おさむ
1989年〜 小学館ビックコミックオリジナルに連載
- [2006/04/21 16:44]
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